みなさんは、毎日どのようにスマートフォンやパソコンを使っていますか？
例えば、お気に入りのアプリを開いたり、ウェブサイトで情報を探したりする時、「使いやすいな」とか「見やすいな」と感じたことはありませんか？

実は、そんな「使いやすさ」や「見やすさ」を作り出しているのが、現代のデザイナーたちなのです。
昔は「デザイン」というと、ポスターや雑誌の表紙を作るような仕事を思い浮かべる人が多かったかもしれません。
でも今では、私たちが日常的に使うスマートフォンのアプリやウェブサイトを作る仕事も、デザイナーの大切な役割になっています。

この記事では、そんな現代のデザインについて、初めての人にも分かりやすく説明していきます。
デザインの歴史や、今のデザイナーに必要なスキル、そしてデザインを学ぶとどんな仕事ができるのかまで、幅広くお話しします。

デザインに興味がある人はもちろん、将来の仕事選びで迷っている学生さんや、新しいことにチャレンジしたいと考えている社会人の方にも、きっと参考になるはずです。

では、一緒にデザインの世界を探検してみましょう！

1. デザインの変遷：ポスターからスマートフォンまで

昔のデザイン：目で見て楽しむもの

昔のデザインというと、主に「見た目」を重視するものでした。例えば

• ポスター：街に貼られた映画やコンサートの宣伝
• 本の表紙：書店に並ぶ本を手に取りたくなるようなデザイン
• 商品パッケージ：スーパーの棚で目立つような工夫

これらは、人々の目を引いて「かっこいい！」「かわいい！」と思わせることが大切でした。

コンピューターの登場：デジタルデザインの始まり

1980年代後半から1990年代にかけて、一般の人々もコンピューターを使うようになりました。
そして、デザイナーの仕事にも大きな変化が起きました。

• デジタルツールの登場：手書きやはさみ・のりの代わりに、マウスとキーボードを使うように
• ウェブサイトの誕生：インターネットの普及に伴い、ウェブサイトをデザインする仕事が生まれる

この頃から、デジタル上のデザインに「道具としての使いやすさ」の概念が加わってきました。
ただ、デジタルデザインの初期段階は、まだ「専門家が使えれば良い」ものでした。
なので見た目の格好良さや、使いやすさは、まだまだ未熟なものでした。

使いやすさの重要性：ユーザビリティの時代

2000年代に入ると、パソコンが一般普及したことで、デザインの重要性が増しました。
素人でも使いやすく、そして使いたくなる格好良さ、デザイン性が求められたのです。
デジタル上のデザインは、もはや専門家だけが使うものではなくなりました。

• ユーザビリティ：製品やウェブサイトの使いやすさを指す言葉
• 情報設計：必要な情報を探しやすくするための工夫
• シンプルなデザイン：余計な装飾を減らし、必要な情報を見やすく

例えば、オンラインショッピングサイトなら

• 商品を探しやすい
• 買い物かごに入れやすい
• 決済がスムーズ

といったことが大切になってきました。

もはやデジタルにおけるデザインは単なる情報伝達や専門家だけのものではなくなりました。
道具としての使いやすさを追求することも、デザイナーの仕事になったのです。

スマートフォンの登場：どこでも使えるデザイン

2007年に初代iPhoneが発売され、デザインの世界は再び大きく変わりました。

• 小さな画面：限られたスペースで情報を見やすく表示する工夫
• タッチ操作：指で直接触れて操作することを前提としたデザイン
• レスポンシブデザイン：様々な画面サイズに対応できるウェブデザイン

スマートフォンの普及により、「いつでもどこでも」インターネットを使う時代が来ました。
デザイナーは、電車の中で片手で操作する人のことも考えてデザインする必要が出てきたのです。

また、さらにデジタルのデザインが一般化。
これにより、どんな人でもすぐ使えるデザインが重要になりました。

現在：ユーザー体験（UX）の時代

今では、製品やサービスを使う人の「体験」全体の設計も、デザイナーの大切な仕事になっています。

• ユーザー体験（UX）：製品やサービスを使う際の、全ての体験を指す
• カスタマージャーニー：サービスを知ってから使い終わるまでの流れを設計
• 感情的なつながり：ユーザーが愛着を持てるような体験作り

例えば、音楽ストリーミングサービスのSpotifyについて見てみましょう。
ユーザーの好みを学習して新しい音楽を提案したりしますよね。
年末に「あなたの年間ベスト」を作成したりもします。
こうした機能は、単に「音楽を聴く」以上の「体験」をユーザーに提供しています。

2. 現代のデザインスキル：何が必要？

では、現代のデザイナーにはどんなスキルが必要なのでしょうか？
主要なものを見ていきましょう。

ビジュアルデザイン：見た目の美しさを作る

• 色彩理論：色の組み合わせや心理的効果を理解する
• タイポグラフィ：文字の大きさや種類、配置を工夫する
• レイアウト：情報を見やすく、美しく配置する

例：InstagramのようなSNSアプリの画面デザインや、企業のロゴデザインなど

ユーザーインターフェース（UI）デザイン：使いやすい画面を作る

• ボタンやアイコン：分かりやすく、押しやすいデザイン
• ナビゲーション：サイトやアプリの中を迷わず移動できる設計
• フィードバック：操作に対する反応（音、振動、アニメーションなど）

例：スマートフォンの設定画面や、オンラインバンキングアプリの操作画面など

ユーザーエクスペリエンス（UX）デザイン：全体的な体験を設計する

• ユーザーリサーチ：実際の利用者の行動や気持ちを調査する
• ペルソナ作成：典型的なユーザーのモデルを作り、その人の視点で考える
• プロトタイピング：アイデアを素早く形にして試す

例：新しい家電製品の使い方全体を設計する、ホテルの予約から滞在、チェックアウトまでの体験を設計する

プログラミング基礎：デザインを実現する技術を理解する

• HTML/CSS：ウェブサイトの基本構造とスタイルを作る言語
• JavaScript：ウェブサイトに動きや対話性を加える言語
• プロトタイピングツール：AdobeXDやFigmaなど、デザインを素早く形にするツール

実際にコードを書く必要はなくても良いです。
ただ、エンジニアと協力して仕事をする上で、基本的な理解は重要です。

デザイン思考：問題解決のための考え方

デザイン思考とは、問題を解決したりアイデアを生み出したりするための考え方や方法のことです。普通の人が日常生活で直面する課題から、大企業が取り組む複雑な問題まで、幅広く活用できます。

デザイン思考の基本的な流れは、次のようなステップで進みます：

1. 共感する： 問題を抱えている人の立場に立って考えます。例えば、お年寄りがスマートフォンを使うのに困っているとしたら、実際にお年寄りの方と話をしたり、一緒にスマートフォンを使ってみたりして、どこが難しいのかを理解します。
2. 問題を定義する： 本当の問題は何かを明らかにします。スマートフォンの例だと、「画面が小さくて文字が読みにくい」とか「触れる場所が分かりにくい」といった具体的な問題点を見つけます。
3. アイデアを出す： 問題を解決するためのアイデアをたくさん考えます。この時は、変なアイデアでも否定せずに出し合います。例えば、「音声で操作できるようにする」「ボタンを大きくする」「よく使う機能だけを表示する」など。
4. プロトタイプを作る： アイデアを形にします。本格的なものを作る必要はなく、紙で作った模型や簡単なスケッチでもOKです。スマートフォンの例なら、大きなボタンだけを配置した画面のイラストを描いてみるなど。
5. テストする： 作ったプロトタイプを実際に使ってもらい、感想をもらいます。お年寄りの方に紙の模型を見せて、使いやすそうかどうか聞いてみるなどします。

この流れを繰り返しながら、より良い解決策を見つけていきます。

デザイン思考の特徴は、次のような点です：

• ユーザー中心：使う人の立場に立って考えます。
• チームワーク：様々な視点を持つ人たちで協力します。
• 試行錯誤：失敗を恐れず、何度も挑戦します。
• 創造性：既存の枠にとらわれない新しいアイデアを大切にします。

デザイン思考は、デザイナーだけでなく、ビジネスマンや教育者、政策立案者など、様々な分野の人々に活用されています。複雑な問題に直面したとき、新しい視点で解決策を見つけるのに役立つ考え方なのです。

3. デザインスキルを活かせる仕事

デザインスキルを身につけると、どんな仕事ができるのでしょうか？いくつか例を挙げてみます。

ウェブデザイナー

ウェブサイトの見た目と基本的な機能を作ります。

• 活躍の場：ウェブ制作会社、広告代理店など
• 必要なスキル：HTML/CSS、グラフィックデザイン、レスポンシブデザイン

UX/UIデザイナー

アプリやウェブサービスの使いやすさと見た目を設計します。

• 活躍の場：IT企業、スタートアップ企業など
• 必要なスキル：ユーザーリサーチ、ワイヤーフレーム作成、プロトタイピング

プロダクトデザイナー

デジタル製品全体の設計を担当します。

• 活躍の場：大手テクノロジー企業、製品開発企業など
• 必要なスキル：UX/UIデザイン、プロダクトマネジメント、ビジネス戦略

サービスデザイナー

製品だけでなく、サービス全体の体験を設計します。

• 活躍の場：コンサルティング会社、大手企業の企画部門など
• 必要なスキル：カスタマージャーニーマッピング、ビジネス分析、デザイン思考

デザインマネージャー

デザインチームを率いて、プロジェクトを管理します。

• 活躍の場：大企業のデザイン部門、デザインエージェンシーなど
• 必要なスキル：リーダーシップ、プロジェクト管理、デザイン戦略

フリーランスデザイナー

独立して、様々な企業のデザイン案件を手がけます。

• 活躍の場：自営業、クラウドソーシングプラットフォームなど
• 必要なスキル：多様なデザインスキル、営業力、時間管理能力

まとめ：デザインの未来

デザインの世界は、テクノロジーの進化とともに常に変化しています。
これからも新しい課題や可能性が生まれるでしょう。例えば：

• AIとデザイン：人工知能を活用したデザイン支援ツールの発展
• VR/AR：仮想現実や拡張現実の世界におけるデザインの重要性
• 持続可能性：環境に配慮したデザインの必要性

デザインを学ぶことは、単に「きれいなものを作る」技術を身につけることではありません。
人々の生活をより良くするための問題解決能力。
そして、新しいアイデアを生み出す創造力を磨くことでもあるのです。

デジタル時代のデザインスキルは、私たちの暮らしをより便利にします。
さらに、より楽しくするための重要な要素です。
この記事で、少しでもデザインの世界に興味を持っていただけたら嬉しいです。

デザインの道を選ぶにせよ、別の道に進むにせよデザインの考え方は重要です。
特にデザイン思考を中心とした考え方は経産省もすべての社会人に習得を推奨するほどです。
中でも下記の2つは、生涯にわたって活動を支援してくれるでしょう。

• ユーザー視点で考える
• 問題を創造的に解決する

こうしたデザインの考え方は、きっと皆さんの人生を豊かにしてくれるはずです。
あなたも自分なりのデザインスキルを磨いてみませんか？