人の心を掴みとれ! ブランドを作る5つの構成要素
ブランド、というとみなさんは何が思い当たるでしょうか。
服や食品、ホテルやサービス、様々なブランドがあります。
とはいえ、そういった高級な商品や企業ばかりをブランドと呼ぶわけではありません。
ブランドとは、どんな企業でも、どんな商品やサービスであっても取り入れるべき手法です。
ブランディング、なんて言葉でよく表現されたりもします。
業界やジャンルは関係ありません。
どんな商品やサービス、企業であっても、ブランドは存在します。
そして「人の心に直接アプローチ出来る強力な武器」にもなります。
どんな魅せ方をしていきたいのか。
そして、自分たちが将来的に、どのような企業や商品、サービスとして社会に価値を与えたいのか。
印象的なブランドとして人の心に触れるためには、どんなポイントを抑えればいいのか。
今日は、ブランドの作り方、抑えておくべきポイントをまとめていきます。
しっかりと筋道を立てて考え、自身のブランドとして確立させていきましょう。
世界で最も時価総額の高い企業は、現状Appleです。
Appleは新製品および新商品を発表するときに、大掛かりなイベントを行います。
WWDCと呼ばれているイベントです。
報道陣や開発者、企業、一般の方向けに巨大な会場を用意します。
まるでコンサートのようにプレゼンテーションをおこなうのです。
「コンサートのよう」という表現がピンと来ないかもしれません。
日本の一般的なプレゼンテーションに慣れていると、そうならざるをえません。
もしご覧になられていない方がいらっしゃいましたら、こちらを見てみてください。
人々はこのイベントを心待ちにしています。
世界が変わる瞬間を見られるかもしれないからです。
Appleが商品を発表して、次の日から一気に世界の様相が変わったケースは何度もあります。
「世界を変えるために商品を作る」というAppleのビジョン。
スティーブ・ジョブズの生み出した数々のストーリー、歴史、商品。
全ての重みが重なって、Appleというブランドを作り上げている。
だからこそ、人々はAppleを好きになりるのです。
そして、記憶に残り、毎回のプレゼンテーションを心待ちにします。
これこそ、Appleというブランドがなせる業です。
もし、自分たちの作り出す商品やサービスが、心待ちにされているとしたら。
ものすごくやりがいのあることだと思いませんか?
でもそれは「世界一の企業価値を誇るAppleだから」出来ること。
そんなふうに思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かにその一面もあります。
しかし、どんなブランドも最初は無名だったのです。
そこから、いかにブランドが作り上げられたのかが大事です。
他の企業もたくさん、ブランドを持っています。
どうして有名ブランドと言われる彼らは、そこまで人々に認知されるに至ったのでしょう。
今回はブランドの構成要素について、じっくりと、解剖していきます。
1. 人々の印象に残るブランドは「物語性」を持っている
まず、ブランドにはストーリー性があります。
どんなブランドも物語を持っています。
有名になったから物語が引き出されたのではありません。
物語を作ってきたから有名になった、と考えるべきでしょう。
ブランドの歴史には創業者の行動や生き様がやはり大きく影響してきます。
とは言っても、全ての創業者がそんなドラマチックな生き方はできない。
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
まさにその通りだとも思います。
ただ、大事なのはビジネスに対する想いや成し遂げたい気持ちです。
その気持ちから生まれた全ての行動が物語となり得るのです
人々から愛され、一般企業よりも明らかにたくさんの愛情を受けて育つブランドは、どのようなブランドでしょう。
すべての有名なブランドは、なぜそれをやるのか、という理由からすべてがはじまります。
なぜ、その事業をするのか。
なぜ起業するのか。
その先に何があるのか。
商品やお金以前に、芯のある動機が人の心を動かします。
企業活動をなぜ行うのか。
ブランドの活動を通して、何を実現させたいのか。
「お金を稼ぎたいから」という動機に、一般消費者は付いてきません。
スティーブ・ジョブズは「世界を変える」という動機を持っていました。
だからこそ、世界を変えるための行動が物語を紡いでいきました。
もし彼が「お金を稼ぎたい」と言って、仲間を口説き落としたのであれば。
それは決してストーリーになることはなかったでしょう。
人の心に訴えかけるような動機を、ブランドにこめなければならないのです。
動機から生まれた活動が、たくさんの物語を紡いでいきます。
人との出会い、想い、話したこと、全てがストーリーとなり得ます。
「なぜ」その活動をするのか、という想いがあれば。
結果に至るまでの行動が全て物語なのです。
物語を生み出すのは奇跡でもなんでもなく、ビジョンがあるか、です。
明確なビジョンやメッセージ、想い、動機、それらを持って仕事をすること。
それで全てが物語になります。
単純そうですが、難しいことですね。
2. 理念、ビジョンを持っていること
すでにある程度、書いてしまいましたが。
先ほども書いた通り、理念やビジョンが必要になってきます。
理念やビジョンは、物語を作り出す他にも、大きな役割を担っています。
それは「人を動かすこと」です。
有名ブランドには、企業や創業者のあり方に心を打たれた人々がいます。
彼らは手を貸したり、商品を購入したり、能動的にアクションを起こしていきます。
「この商品を売って商売を成功させよう」ではありません。
「世界を変えよう。だからこの商品を売ろう」の方が、人を集めます。
しかも、優秀で人望のある人が「面白そうだ」と思い、手を差し伸べてきます。
前者に集まってくる人も、もちろんいます。
しかし、結果的にそういう人と組むのは遠回りです。
一緒にやっても楽しくなかったり。
そもそも仕事があまりできなかったり。
トラブルの時に逃げ出したり。
責任転嫁したり。
そんな人が大多数でしょう。
ところが後者は違います。
自分でお金は稼げるし、金銭的に興味はあまり興味はない。
けれど、なんだか面白そうだから一緒にやろう。
そう声をかけてくれる人が多いはずです。
優秀でありながら、何か面白いことを求めて金銭の向こうを目指す人たちです。
そういった人々は確かに存在します。
彼らは基本的にとても仕事が出来ます。
お金に興味が薄いだけであって、しっかりとその重要性は分かっています。
しかも責任感があるような人です。
そうでなければ、金銭の向こうにあるワクワクするビジョンなんて実現できません。
しっかりとした理念やビジョンは人を動かします。
そして、仲間同様に消費者の心もつかみとります。
特に今の時代はその傾向が強いです。
現在の市場は既に飽和状態です。
どんな商品を作っても、すでに類似の商品があります。
少しでも差別化をしようと考えて手を加えるケースも多いでしょう。
しかし、微々たる差別化ではまったくもって消費者の心に響きません。
専門家が見ると変わったと思っても、消費者から見て変わったと思えない。
そんな程度の変化だと、もはや心に響くことはないのです。
結果、似たり寄ったりの製品が、市場にあふれていきます。
ここで差別化として働くのも「理念やビジョン」です。
商品として類似している内容だとしても、その商品を作る想いが強ければどうでしょう。
その考え方に「共感」した人々が、熱烈なファンとなり、何度も購入してくれるのです。
例えば、街を歩いている時に、聞いたことのある感じの曲が流れてきたとします。
街角で聞いても、ふーんと思うような曲です。
ですが、そのアーティストがストーリーを持っていればどうでしょう。
「色々な苦楽を共にしてきた友人がいて、その友人が結婚した」
そんな時に思いをこめて作った曲だとしたらどうでしょう。
物語を知っていれば、ちょっと特別な曲なんだと感じるのではないでしょうか。
理念やビジョンも一緒です。
例えば商品そのものに他とあまり差がなかったとしても。
際立って印象的な理念やビジョンがあれば、その考え方に人がついてきます。
商品が溢れ、差別化がなかなか難解になってきた今。
その考え方そのものに「共感」することで、ついてくるファンは少なくないのです。
そして、考え方について来てくれたファンは、簡単には離れることはありません。
人を動かし、ファンを作り、差別化をする。
それが、理念やビジョンを持つ効果です。
3. 世界観を持っている
抽象的な言葉になりますが、世界観とは何を意味するのでしょうか。
その秘密は顧客となる消費者、そして創業者やボードメンバーのセンスにあります。
まず、消費者を思い浮かべてください。
彼ら、そして彼女たちの心の奥底には商品やサービスに何かイメージを持っています。
「こんなシチュエーションで、こんな道具を使いたい」
「こんなイメージの部屋に、こういう家具を置きたい」
無意識の中に好みのイメージがあるのです。
ブランドが獲得したい層は事業の早い段階できまります。
その層は一体どのようなイメージをもっているでしょうか。
該当の商品やサービスについて、何を感じているのかを知る必要があります。
例えばネクタイを例とするとどうでしょう。
ものすごく優秀なビジネスマンがいたとします。
彼はバリバリ仕事の出来る自分にちょっとした優越感があります。
そして、仕事の出来るスマートな人間でありたい、という願望を持っています。
そこに「仕事の出来るスマートな男性がつけるブランド」というブランドを勧めたらどうでしょう。
きっと、彼は興味をひかれるわけです。
自分自身がそう有りたい、と願う願望をかなえてくれる。
最も自分の理想に近いブランドであると、購入する際の検討材料に入るのです。
他にも、例えば「お伽話の世界のような可愛らしいお姫様」でありたい女性がいたとします。
そこに、お伽話をテーマにしたファッションブランドを立ちあげたら。
ターゲットのイメージに世界観が合致すれば、検討対象に入ります。
人にはそれぞれイメージがあります。
そのイメージにデザイン、言葉、哲学などをフル活用し、合致あせること。
理想と合致するような印象をブランドに持たせること。
それが出来れば、世界観が構築されます。
そして、ターゲットの趣向と同様に大切なのが、創業者やボードメンバーです。
ボードメンバーの中にもこうありたいと考える人がいるでしょう。
大抵の場合、その考えばかりに囚われると失敗します。
消費者目線ではないからです。
経営者サイドの「こうありたい」で事業を進めていくと、消費者が置き去りになります。
しかしブランドの場合は絶対的なファンがつくケースもあります。
経営者のこうありたい、こういう生き方をする人間でありたい。
いってみれば、そうした哲学や考え方そのものを好きになるのです。
こんな人になりたいという憧れを持つ人は少なくないでしょう。
そこに、仲間と顧客の考え方が合致すれば、ファンは後からついてきます。
消費者の趣向を徹底的に調査するのもよいでしょう。
その結果にあわせて世界観を形作っていくのもありです。
自分の生き方やこうありたい、こうあって欲しいという願い。
強い願いを込めてブランドを作り、世界観に共感、合致した消費者や仲間が集まってくる。
そのどちらも使い分けたらいいと思います。
無難なのは前者です。
宗教にも近い爆発的かつ深い繋がりを持てるのは、後者であるとも言えます。
どのようなイメージで行きたいか、貫きたいのか、ぜひ考えてみてください。
4. シンボルを持つこと
理念やビジョン、導き出した世界観を表す「象徴」があるとなお良いです。
ロゴやサービス名、社名など、ビジュアル的にも脳裏に刻みやすい象徴を考えましょう。
ビジュアル・アイデンティティという言葉があります。
理念やビジョンを形として目から記憶に残しやすくデザインされたものです。
大きく分けると、ロゴマークやロゴタイプ。
この企業、ブランドはこのデザインだよね、というデザイン体系などがあります。
例えば服やバッグブランドでも、作り込まれたロゴがあります。
そしてこのブランドのデザインルールも決められているケースが多いです。
このような形になっている、この色が使われている。
魅せ方に「ある一定の規則」があるのはイメージ出来るかと思います。
このブランドはこうだ!というデザインを決めましょう。
言葉やコピーだけでも、心に響くものであれば、確かに心に残ります。
しかし、見た目からの印象というものも、ブランドにおいては非常に大切な要素です。
でも具体的にどうすればいいの? と迷う方も多いでしょう。
まずは理念、そしてビジョンを元に、ロゴマークを作ってみましょう。
自分が実現したいことを表現したロゴマークを制作すること。
それが、これから長い歴史をたどるブランドにとって、ひとつのシンボルとなります。
ルイヴィトンを想像すれば、すぐロゴの形が出てくると思います。
逆にルイヴィトンのロゴを見ればすぐにその名前が頭に浮かんでくるでしょう。
ロゴがあることで、人々の日常生活に形で溶けこむことができます。
次に、ロゴタイプを作ってみましょう。
ロゴタイプとは聞きなれないかもしれません。
わかり易く言えば、ロゴマークの隣によくある、自社を表す「文字」のことです。
ロゴマークはあくまでも「マーク」。
ロゴタイプは「タイプ」。
つまり文字です。
先ほど例にあげたルイヴィトンも、マークとタイプ、それぞれ決まっていますよね。
両方のイメージを決めておけば、状況によって使い分けたりもできます。
そして、最後にデザイン。
自社の「メインカラー」と「サブカラー」を決めましょう。
これも、理念やヴィジョンを表現する色がいいです。
また、何かをデザインする際に使う「模様」も決めてもよいでしょう。
自分たちのブランドはこれだ!というデザインのルールを最初から決めてみてください。
今後何かをデザインする上で、すべてそのルールに沿って作ってみてください。
やがて全てのデザインに統一感が生まれます。
その統一感こそが、ブランド全体をイメージさせるアイデンティティとなります。
ロゴマークやロゴタイプ、デザインをあなどってはいけません。
人の脳裏にブランドのイメージ、会社を視界から記憶させる最良の方法です。
そのデザインが格好いい、可愛い、格好わるいで全て、ブランドの印象が決まります。
ロゴだから、と言って予算を出し渋ったりすると痛い目を見ます。
「文字にお金をかけるの? デザインにはそこまでお金をかけるものではない」
なんて、見くびっていると、後で後悔するでしょう。
何しろ一度、人の印象に根付いたブランドイメージは、なかなか変えられません。
最初からしっかり決めて視界からイメージを記憶させておけばよかった。
デザインを作り込めば、もっとスムーズに人々に浸透していたのに。
後からそう思っても後の祭りです。
5. 一貫性を持たせること
先ほどのシンボルにも通じることなのですが、一貫性が大切です。
最初に決めたビジョンや理念に関しては特にブレ無いようにしましょう。
ただし、挑戦範囲の指針はあまり持つ必要はありません。
どういうことかと言えば、やはりAppleをみればわかりやすいでしょう。
ブランドの話になると、やはりAppleが登場せずにはいられません。
彼らは「世界を変える」というビジョンを持っています。
実際に発表するサービスは、さまざまです。
コンピューターを作ったり。
音楽サービスを仕掛けたり。
決済サービスをしたり。
携帯電話を作ったり。
実に多様です。
しかし、広く受け入れられています。
なぜでしょうか。
彼らは特にコンピューターを作る会社、ということが理念ではないからです。
理念はあくまでも「世界を変える」ことなのです。
だから、世界を変えられるサービス、発明は、ジャンル関係ありません。
どんどん発表し、社会に還元していきます。
つまり、発表しているものはバラバラであったとしても構わないのです。
「世界を変える」という理念において一貫性があれば消費者はついてきます。
他にもこうした企業はたくさんあります。
例えばLINE。
最初はコミュニケーションアプリでしかありませんでした。
しかしいつの間にか色々なサービスをスタートしています。
決済サービスや音楽サービス。
ゲームやスタンプ。
多様な形態からサービスを提供しています。
LINEは「知っている人同士のコミュニケーションをホットにする」という理念を持っています。
その理念が一貫性として存在すれば、どんなサービスでも一貫性があるのです。
つまり、ブランドにおける一貫性とは、理念やビジョン、根本の信念を崩さないことです。
その信念を実現するためには、あらゆる業務形態を発信しても問題ありません。
ブランドとしての一貫性は保たれるのです。
ただし、デザインとしての一貫性は、変更してはいけません。
デザインの「印象」は積み重ねとも言えます。
「このデザインや色合い、模様はこのブランドのものだ」
その認識を生むには案外時間がかかるものなのです。
せっかく長い時間をかけて認知を広めてきたとします。
しかし、すぐにデザインの方向性を変えてしまっては、本末転倒です。
また最初からやり直しになってしまいます。
デザインや魅せ方に関しては、常にある一定を保つようにしましょう。
だからこそ、多少予算がかかったとしてもしっかりと決める必要があります。
6. まとめ
ブランドは現代の企業でしっかり決めてあるケースは少ないかもしれません。
むしろ最初、理念や信念を持たずに会社だけ立ちあげる場合も多いです。
登記してから「さて何をやろうか」なんて考える経営者も少なくありません。
むしろ、そこから決めてくれと外部に相談を持ちかける方もいるかと思います。
それでも悪くありませんが、もったいないです。
というのも、ブランドは人を惹きつける重要な要素です。
その有りかたを見て好きになってくれる人がたくさんいるわけです。
ところが、それが無いということはその分、何かを提供しなければならないのです。
それは、経営の行き先や方針を打ち出すものでもあります。
決めるのが遅くなるほど、後の運営に苦労するかもしれません。
起業家になりたい、という人はたくさんいます。
しかし、その大部分が「理念や信念は?」と尋ねると、何も出てきません。
これがどういうことかと言うと「売上を上げづらい」ということです。
ひとまず面白いことやりたい、で始めると、逆にやりづらいのです。
本当に「面白い」と社会が思うようなビジネスを連発できれば、それもありかもしれません。
ただ、面白いこととはつまりどういう方向性なのでしょう。
向かうべき道は、理念に含めてしかるべきです。
Appleの「世界を変える」もそうです。
面白いという中でも「世界を変えられる」ことをする。
結果的に世界ごと事業が面白くなる、という方向性が決まっています。
何かやりたいという思いがあったとして。
つまりそれが何なのかを軸にしておかなければ、後々困るのは自分です。
売上を上げたいなら、まずはファンのつくような考え方や理念を構築すること。
自分たちのブランドはこうであるといった魅力を押し出していくこと。
だからこそ、たくさんの人に愛される構図を作ることが大切なのではないでしょうか。
もし何もなければ、最悪、思いつきでも良いです。
面白いと思う方向性を、理念やヴィジョンに掲げてみてください。
言葉に発しているうちに、想いが宿ってくることもあります。
人に愛されるブランドを作り、魅力的な企業を育てていきましょう。
それがきっと、結果にも結びつきます。