価値観は1つではない。発想の柔軟性を手にいれる瞬間。
カナダ極北の街、ホワイトホース。
ゴールドラッシュ期に栄えたこの街は、当時の面影をいたるところに残す。
今は、オーロラ鑑賞の地として名を馳せるが、アウトドアを楽しむ拠点として最適だ。
ホワイトホースのあるユーコン州は、そのほとんどが永久凍土に包まれている。
特に南西にある凍土は人間が生身では不可侵のエリアとされ、氷に包まれた大今なお、大自然がその存在感を誇示している。
そんな過酷な環境において、ホワイトホースは唯一、人によって開拓された街らしい街と言えるだろう。
現地をよく知るガイドと共に街を巡った後、カフェで一息ついていた。
なお、ガイドは現地で生まれた人ではない。
ユーコン州でカナダの永住権を習得して、ホワイトホースに住み始めた人だ。
基本的に冬となればマイナス30度を越す過酷な環境だ。
住み始めようとすれば、それなりに覚悟がいる。
だが、不思議なことに彼の話を聞けば聞くほど、土地に魅力を感じてくるのだった。
まず、アウトドアが盛んであること。
アウトドアが楽しみの軸で、お金を使わないこと。
人が足を踏み入れない地が数多くあり、冒険心をくすぐられること。
自然と遊ぶに許可はいらないが、全てが自己責任であること。
永住権が取りやすいこと。
自然と共生し、人が温和であること。
スキーやスノーボード、ウィンタースポーツの聖地。
様々な角度から考えて、魅力的であることが伝わってくる。
訪れなければ理解できなかったし、来たからこそ見えた良さだった。
知らない土地について知ることは、人生の選択肢を増やすことになる。
新しい価値観や考え方を根付かせる、充分なきっかけになる。
想像力を拡張し、新しい発想を生み出す材料になる。
それだけで、旅をする理由としては充分ではないだろうか。
ただ、深く知らなければならない。
できるだけ、滞在する期間の中で土地の文化に触れる。
良い部分や悪い部分に直接触れる。
だからこそ、本当の良さが見えてくるのだ。
ユーコン州ホワイトホースは、人口3万人程度の街だ。
極北で冬には極寒となる土地では人が助け合って生きる必要がある。
だからこそ、人は温和で協力的なコミュニティを形成する。
その魅力に惹かれて住み始める日本人も少なくはない。
だが、常に極寒というだけではない。
夏場には意外にも30度を越すこともあり、絶好のアウトドアシーズンとなる。
暖かくなったら、広大な大自然が自由な遊び場になる。
カヌーやキャンプ、ハイキングやラフティング、ロッククライミング。
その他、アウトドアと名がつくものなら、大抵なんでも楽しめる。
北に走ると、人間がほとんど手をつけていな場所が広がる。
その先には、原住民を中心としたコミュニティがあり、冒険心を擽ってくる。
未だにハンティングを暮らして生活している部族もいる。
なお、最北に向かうための道は舗装されていない道1本だけだ。
ユーコン州は、とにかく冒険好きの衝動を擽ってくる土地なのだ。
ゴールドラッシュ期に栄えたその歴史もそうだ。
まだ発見されていない鉱脈もまだまだ存在するだろう。
多くの人が夢を求めて北を目指したように、好奇心を刺激する。
僕は、そんな場所がカナダに存在することを、はじめて知ったのだ。
知れば知るほど、日本では出来ない体験が存在する。
まだまだ、人生で味わうべき感動があることを、伝えて来てくれるのだ。
旅の良さは、街を周るだけでは、決して理解できない。
そして、これまでの常識なんてお構いなしに、人の価値観を変えてしまう。
少なくとも、今回の旅でどんな高給なホテルに宿泊するよりも、1回の冒険や旅に生きる方が、刺激的な体験のように感じるようになった。
全てが揃った街、例えばシンガポールや東京のような大都市で過ごすより、何も無い場所を開拓する方が「楽しい」「ワクワクする」と感じるようになった。
自然と触れ合い、文化を知ってこそ、知るべき魅力を理解できる。
これまで価値を感じていたものや、価値を感じていなかったもの。
自分の感覚そのものを、一気に拡張してしまう果てしない魅力がある。
それはまるで、自分の舌に楽しめる味覚を1つ増やすようなものだ。
自分の価値観を広く拡張し、より世界を楽しめるようにしてくれる冒険。
そんな旅を求めて、これからも世界へと足を運んでいくのだろう。