「1」聞いたら「10」理解する地頭力の作り方。
昔、仲間が口にしたある仕事が、頭に残っています。
彼は、ある先輩から、仕事を任せられました。
しかも、端から見ていても雑なお願いの仕方でした。
詳細もあまり伝えられていないように思えました。
情報が足りなすぎて、目隠しして、仕事をするようなものです。
僕は、その様子を見て「ああ、これは失敗するな」と思っていました。
これでは、当てずっぽうに仕事をするしかありません。
数日後、仲間は「仕事が出来ました」と言って結果を持ってきました。
その様子を見て、僕は驚いたのです。
何を言わなくても、細かいところまで仕上げてきたからです。
先輩も「いいね!」とご満悦の様子でした。
僕は、仲間のところにすぐ向かいました。
なぜ仕事を完成させられたのか、尋ねるためです。
超能力者か何かでないと、成せないような内容だと思ったからです。
一緒にランチをしている時、僕の質問に笑って答えてくれました。
彼は、最初から多くの情報なんて、求めていなかったのです。
自分で考え「こうすれば良いだろう」と自分が思う形を実現しただけなのです。
単純な理屈ですが、確かに自分で考えるのであれば、必要な情報など最低限で充分です。
考えた結果の仕事で、先輩やその先にいる人を満足させれば良いのですから。
むしろ、余分な情報は邪魔になるとさえ考えていました。
ただ、望まれていることも、なんとなく分かると彼は言いました。
いくら全てを自分で考えると言っても、見当違いな解決は誰も望みません。
何かを頼まれたら、同時に成すべきことがすぐ分かると。
それを、彼は「経験を積んだから出来る」ことだと教えてくれました。
ところが当時の自分には、経験もほとんど無い状態です。
なぜ彼がベストな仕事を成せたのか、しばらく理解できないでいました。
自分で考え、答えを出せば、確かに情報が少なくても仕事はできます。
それは分かるのですが、なぜ「的外れ」にならないかが疑問だったのです。
先輩やクライアントが望んでいることが、なぜ分かったか。
仲間はそれを、経験則から分かると表現しました。
知識では理解しても、やはり実感として得るのは難しいものです。
それを理解出来たのは、一緒に起業した仲間の成長でした。
まったく仕事が出来なかった仲間がいました。
彼は、何度も聞き直さなければ、お願いされていることさえ理解出来なかったのです。
職場に1人はいる、どうにも融通の聞かない人です。
結果、見かねた僕たちは、彼を訓練しようと考えました。
その過程において、1つの情報から10理解するための方法について研究したのです。
まず、経験則であることは、間違いありません。
数多くの経験を積むことによって、判断基準が出来ていきます。
誰でも、長く仕事をすればさえ、こうすべきという基準は出来ます。
しかし、それだけでは1の情報から10理解は出来ません。
今の状況と、過去の情報を結び付けなければ、無意味だからです。
状況と経験を結びつける力が弱ければ、一向に理解には至りません。
ではどうすれば良いか。
ここで1つ、あるトレーニングを作りました。
与えられた情報と似た知識や経験を、意識的に頭の中で検索するのです。
何か情報を提供されたら、類似する経験や知識を思い出す。
基本的にはそれだけです。
情報元は、テレビや本、インターネット、どんな情報でも構いません。
対人だと難しいので、最初は媒体を相手にすべきでしょう。
個人的には、本を読みながら進めることをオススメします。
何か新しい情報を手に入れたら、今までの経験から情報を引き出します。
そして、引き出した情報と重ねあわせ、納得感を得ます。
過去の経験や体験に、新しく手に入れた情報を重ねて裏付けするイメージです。
最初は難しくても、回数を重ねるうちに慣れてくるでしょう。
時期に1つの情報から「ああ、あれと同じようなものか」と理解できるようになります。
さらに慣れると、いくつもの経験が、同時に引っ張り出されるようになります。
慣れていなければ、かなりの集中力を要するトレーニングです。
そんなの難しいよ、と思われた方はいらっしゃるかもしれません。
確かに、難しいかもしれませんが、続けてみてください。
最初はつながれた情報が当てずっぽうだったりします。
見当違いな情報と、繋がることもあるでしょう。
しかし、回数を重ねるうちに、的確な情報を接続されるようになります。
対人で実践するのは、慣れてきたらで良いでしょう。
人が相手になると、心に余裕が無くなります。
頭で検索をかけることよりも、聞くことに熱心になってしまいます。
手に入れた情報と、過去の情報をつなぎ合わせることに慣れましょう。
慣れていれば、対人でも癖のように、経験を参照出来るようになります。
このトレーニングを繰り返した彼は、見違えるように成長しました。
もともと、1の情報から0.5くらいしか理解していなかった人物です。
それが、次第に1の情報から多くを理解出来るようになりました。
実際、似たような進歩の体験として、僕自身も思い当たる節があります。
数年前、本を読んだ時に、素晴らしい体験をしました。
当時、なんとなく、あるビジネス書を読んでいました。
確かロジカルシンキングの本だったと思います。
久しぶりに読書をした瞬間でもありました。
読み始めた瞬間から、感動の連続でした。
確かに名著だったことはあります。
ただ、名著であることを抜きにしても、1つ1つの情報が深く理解できるのです。
読んだ瞬間、過去の経験を結びつき、深い理解に至るからです。
過去、理由が分からなかったことが、全てクリアになっていきました。
一度経験した「なぜ」を、全て本が解決してくれてのです。
読書が、アウトプットの答えあわせになっていたのです。
しかも、実際の経験に紐づくことで、瞬く間に自分のスキルとして身につきます。
今では、毎回本を読むと、似たような体験をします。
全ての情報が「現実の確認」になった瞬間でした。
本で語られていることに「ああ、だからあの時そうだったのか」と記憶が繋がります。
振り返ると、なぜそういう結果になったのかと、理由が朧げな経験もたくさんあります。
本を読んだ瞬間に、その情景と本の内容が繋がり、一気にクリアになるのです。
だからこそ、本の内容も即座に頭に入ってきます。
対人での情報理解も、こうした「経験との紐付け」の延長に他なりません。
対人もまた経験です。
何度も経験を重ねていると、心と頭の余裕が出来るようになります。
話をしている最中に、並列で処理できるようになるのです。
結果的に、1つの情報から10理解できるスキルが身につきます。
ただ、ここで終わりではありません。
実は、このスキルには、まだ先があります。
皆で議論していると、時々、1つの情報から先読みする人がいます。
僅かな情報から、マインドマップのように思考が広がり、先読みして発言するのです。
おかげで、まわりは何を話ているのか、理解に苦しむ時さえあります。
順を追って説明してもらうと、なんとも論理的で腑に落ちる話なのです。
1つの情報から複数理解する事に慣れると、今度は先を見るようになります。
まだ経験していないことでも、答えを導き出せるようになります。
マーケティングオートメーション(MA)について聞いていた時のことです。
もう3年も前、2015年の話ですね。
僕たちは、MAの専門家を囲んで、ゆっくりお酒を飲んでいました。
彼は、MAについて、あれこれ教えてくれました。
その光景に出会ったのは、彼が大事なことを教えてくれた時でした。
MAを使うと「誰が」「いつ」サイトにアクセスしたかが分かると。
だから、相手がサイトにアクセスしてきた瞬間に電話をかけることが出来ると。
中にいた大半の人が「え、どういう仕組み?」と質問しようとした時です。
話を聞いていた1人の人物が質問を投げかけました。
「IPアドレスと企業情報を結びつけたリストが重宝されそうですね」
そのときは、多くの人が「良く分からない」という顔をしていました。
最も、教えてくれたMAの彼は「そう!」と頷いていましたが。
後に、どうしてすぐに理解出来たのか、彼に訪ねました。
彼の頭の中では、幾つかの連想が繋がったそうなのです。
基本的な流れ的にはこうです。
まずMAのことを聞いた時、システム的にどうすれば可能になるか閃きます。
次に、自前でそのツールを作る方法が閃きます。
さらに、応用して出来るであろう仕組みまで、連鎖的に閃きます。
1つの情報で、MAに関する多くの情報が「知っている」ものになったのです。
さらに、必要なものを想定し、周りを置いてけぼりにしたわけです。
ほんの一瞬で多くのことを理解できるものだと驚きました。
連想にまつわるゲームを、みなさん一度やったことがあるのではないでしょうか。
数年前に「マジカルバナナ」というゲームが流行りました。
最初の人が「バナナと言ったら黄色」と答えたら、次の人に移ります。
次の人が「黄色といったら、ひまわり」と言うように連想していくのです。
あのゲームと、根本は一緒でした。
「なぜサイトにアクセスした人に電話をかけられるか」
「最初にIPアドレスを取得しておく必要がある」
「リストを集めた時にIPアドレスも取得する」
「次に同じIPアドレスからアクセスされたら誰かも分かる」
「するとIPアドレスに企業情報を入れ込んだリストが・・・」
「応用するとこんなことも・・・」
「てかこれ、割とすぐ作れる?」
といった具合で連鎖的に理解を深めていったのです。
1つの情報で10理解するだけでなく、発展させて先も提案することが出来るのです。
こうしたらこうなる、というシミュレーションを頭の中で行っていたからです。
彼の思考を取り入れたら、より皆の力を引き出せるのではないか。
そう考えた僕たちは、2つめのトレーニングを作り出しました。
単純な連想ゲームです。
前回のトレーニングでは、与えられた情報と経験をつなぎ合わせました。
今回のトレーニングは、与えられた情報を経験とつなぎ合わせ、さらに連想します。
例えば、ウェブで商品を売る方法について、教えられたとします。
まずは自分の過去の経験と結びつけ、実体験として方法を理解します。
過去、あんな経験あったな、こんな知識を教えてもらったなと、つなぎ合わせます。
前回はここまででした。
今回は、さらに売上を上げるにはどうすべきか、連想するのです。
ウェブで売上を上げるには、人をサイトに集める必要がある。
人をサイトに集めるのは、広告かSEOかソーシャルか。
広告を売ってソーシャルに人を集めよう。
そのためには、ターゲットを絞る必要がある。
ターゲットとセグメントはこんな感じで。
ではこの層に合うクリエイティブはこんな感じで。
といったように、1つの情報から複数の連想を行うのです。
大切なのは連想スピードです。
高速で、どれだけ連想出来るかが勝負です。
10秒だけ時間を決めて、その間にどこまで考えられるかを数えましょう。
慣れないうちは紙に書いて広げても構いません。
最初は少ししか連想できないものが、慣れてくるとすぐに連想出来るようになります。
もちろん知識や経験を蓄積すれば、それだけ選択肢も増えます。
こうしたトレーニングを行うことで、チーム全体の思考力は格段に向上しました。
また、日常的に自分の中で行うことで、さらに成長を早められます。
それからは、情報を広げて理解し、さらに先読みして連想するようになりました。
本を読んでいたとしても、インターネットで拾った情報も一緒です。
手に入れた情報を起点に幅広く理解し、すぐに応用を考え、今後に組み込みます。
気づくと、1つの情報に対する価値が、大きく変わっていました。
自分が変わると世界も変わると言いますが、1つの知識に対する価値も大きく変わったのです。
与えられる知識は、新しい発想を作り出すトリガーのようなものだと感じます。
1から10を理解し、さらに発想を広げて、先の提案を想像する。
こうしたスキルは、訓練次第でいくらでも身につけられます。
世の中の成果を出すビジネスマンは、身に付けている方も多いことでしょう。
中には「そんなの当たり前だ!」と思う人もいらっしゃるかもしれません。
ですが、当たり前だと思い、語らないので、知られない人も多いのでは、とも思います。
自分でも体感してみたいと思ったら、ぜひ挑戦してみてください。
まず、今回、提案したトレーニングについて、挑戦してみると良いでしょう。
実際に仕事をする上で、そして何かを理解する上で、重要な思考です。
知っているだけでは、使いことなすことは出来ません。
トレーニングをして、ぜひ、身につけてみましょう。
クオンカレッジβテストでは、こうした思考力向上の訓練も行っていきます。
スキルだけでなく、基礎的な能力を向上させたい方も、ぜひご参加ください。